99の忘備録

クラピカ推しの人間が書いてるからそこんとこ注意してくれ

映画「この世界の片隅に」感想【すずと水原哲について】

映画のネタバレがあります。

注意してください。

 

 

 

 

映画「この世界の片隅に」を見た。

たくさんの人があの時代に“普通に”日々を生きて暮らしを営み、第二次世界大戦は自分が今生きている日々とずっと繋がっている...頭では分かっていたけど...今も昔も人は同じだなぁと肌で感じる。そんな映画だった。みんなが笑って過ごせたらいいのにねと言ってくれるような優しい(ハゲができる程ストレスだけど優しいと言う...)お家にお嫁にいって、すずさんはそこで居場所を見つけた。お義姉さんの子どもを死なせてしまって(時限爆弾という不可抗力だしすずさんのせいじゃないけど、一緒にいたのに手を握っていたのに自分だけ生き残ってしまう辛さ)、右手も失って絵を描くこともできなくなって、嫁なのにお家のこともできなくなって、それでも日々を普通に生きていくことを選択しそうやって生きていくことの尊さ。私もすずさんのように毎日生きようって感情になった。

 


なったのだけど...これは映画を見てちゃんとした自分が抱いた感情で、自分の中で生まれたもう一つの目線で見るとこんなに素直に受け取れない。

 


間違ってるってわかってるけど、水原哲に惹かれすぎて感情がぐちゃぐちゃになる。私は水原哲が好き。すずさんだってそうだったんでしょう?!“ずっとこんな日を待っていた気がする”んでしょう?!水原さんが北條のお家に来て自分の腕を引っ張って連れていってくれる日を待っていたんでしょう?呉の人との結婚と聞いて頭に思い浮かんだのは軍港にいる水原さんだったんでしょう?椿の花をもらった時恋におちたんでしょう?すずさんだって水原哲のことが好きだったんでしょう...わかるよ、すごく伝わってくる。だからこそつらい。水原哲はずっとすずのことが好きだった。学生時代を見返して泣いてしまった。北條のお家を訪れてすずを見て笑う水原哲に泣いた。すずはぼーとしてるでしょと俺がもらってやりますよと冗談めかして言う水原哲に泣いた。すずは柔いね、こまいねと撫でる手に泣いた。水原哲はずーっとすずのことが好きで、結婚して夫もいるとわかっているけど死ぬ前に会いたい程にすずが好きなんだと水原のすべてから伝わってくる。すずの作るご飯を食べられて幸せだっただろうな、と同時に夫婦として暮らす周作が心底羨ましかっただろうな。すずが水原に遠慮なく喋る様子を見て周作は2人の親密さに嫉妬したし、水原が何故わざわざ同郷のすずに会いにここまで来たのかわかっただろうし、“青葉に乗ってる軍人”の水原に忖度(青葉に乗る=前線で戦う。前線で死と隣り合わせで戦う軍人に最後に食べたいものを食べさせやりたいことをしてもらい悔いなく前線で戦ってもらうという当時の空気感)し二人きりにさせたのもわかる。水原はすずに迫って、今は周作が好きだからと拒否されて、でもすずは忖度とか関係なく“普通”の感覚で自分に接してくれたことに安心する。すずがそう選択したんだからこれで良かったんでしょう...水原も良かったんでしょう...でも私がつらい。時が戻ればいいのに!結婚の話が出た時にそんな誰だかわからん奴と結婚するなと俺と結婚しようと言えたら良かったのに!すずだって、嫌かどうかもわからん人との結婚なんて断れば良かったのに!何より自分の母の足の具合が悪いからすずを嫁にと考えた周作に腹が立つ!!!この時代の結婚観に腹が立つ!!!すずが周作を好きかどうかの気持ちなんて全然考えられんまま結婚してしまうという、すずも周作も家族も時代の雰囲気もすべてに腹が立つ!!!径子さんに広島に帰りと言われて普通の里帰りと勘違いするすずに腹立つ...。つらい...泣きたい。色んな分岐点があったはずだけど選んできたのはすず自身であることが...つらい。水原哲はすずにとって過去に好きだった人になってしまったことがつらい。周作と一緒になったから呉で生き延びることができたし、水原と結婚してたら原爆に巻き込まれて死んでたかもしれない。それでも、水原とすず、好きなもの同士が幸せになってるのが見たかった。愛し合ってる二人が見たかった。二人きりの納屋の二階でキスをしてほしかった。切ない。

 


最後に、この柔らかくほわっとした絵柄ですずさんがとても色っぽく描かれる一瞬というものが何回かある。その美しさと可愛いさに目を惹きつけられる。